「ハワイ-八丈リーダーシッププログラム」とは、
ハワイ諸島と八丈島。
お互いの似ている所・良い所・改善点。
そんな事をハワイの人達と八丈島の高校生達が一緒に考え始めた。
このようなコンセプトを元に昨年の2014年にスタートしたこのプロジェクトは同じ「島」であるハワイから「伝統、歴史、文化、人、暮らし、多様性、自然との共存」について英語と共に学ぶというものです。
オアフ島にあるハワイ大学カピオラニコミュニティカレッジで行われた約1週間の研修は八丈の高校生、法政大学生、社会人7名が参加し各々がハワイから多くの事を学び貴重な体験をしました。
単なる留学ではなくアメリカ本土や日本の本土とは違う「島」という独自のアイデンティティを若い世代からしっかりと考え、お互いどういう所が似ていて、違いがあるのか。そしてどのように「外」に発信して行くのかを模索していきます。
かつて八丈島とハワイの関係はハワイ州マウイ郡と姉妹都市にあり、昨年2014年に50周年を迎えました。
町制60周年を迎えたのを契機にマウイの学生による夏祭りの前進太鼓ステージや八丈島パブリックロードレースの招致などハワイとの国際交流を復活しようという動きが活発になってきました。
今回のプロジェクトを企画者のひとり、栗田知美さん。
八丈島観光協会ふるさと観光大使でもあり、ハワイ文化交流の担当をされています。
ハワイ大学のVince Mitsuharu Okada(ヴィンス ミツハル オカダ)先生と共にプログラムを立ち上げました。
栗田さんは八丈島で自然ガイドやリラクゼーションショップ
「ハナリマポノ」を営む傍ら、フラダンスに欠かせないレイプランツ、ティーリーフの促進等にも力を入れています。
昨年11月に参加した八丈高校 1年 豊田ののかさん(左)と3年 菊池佳恵さん(右)。
約2ヶ月前のハワイでの経験を熱く語ってくれました。
この企画に協力、協賛をされた方をお招きして、パソコンを使った高校生二人による報告会がはじまりました。
この報告会には参加されていませんが、高校生以外に島の参加者として八丈島で酪農の仕事をされていた浅野沙希さん、八丈島出身のダンサー日々野有海さんも参加しました。
ここから先は二人の高校生の言葉でその内容を語ってもらいましょう。
1日目午前 ホオキパ・メケ・アロハ(アロハスピリットとは何か?)
この授業はハワイの精神文化や伝統的文化について学ぶものでした。
アフプアアという土地区分についてのお話。
カロ(タロイモ)についてのお話はハワイを学ぶ上での基礎になりました。ハワイの人にとってカロはルーツであり、ソウルフード。
先生はハワイアンの方で、とても明るく伝統を大事になさっていて、素敵だなあと思いました。本当に基本中の基本ぐらいのことしか学べませんでしたがハワイを深く理解するうえで、とても役に立ちました。
初日の午後は時差ボケで寝てしまわないようにリガーカヌーをやりました。長い川をくだって、海で出て少し漕ぎました。
海上の遊びは八丈島でもやりましたが、カヌーのパドルを漕ぐタイミングを合わせるのが想像以上の難しさでした。
最後に自然への感謝のお祈りをする慣習はハワイならではと感じました。
2日目午前 カフマナファーム
40年以上バイオダイナミック農法で有機栽培を営んでおり、社会的弱者を社会復帰させているNPO団体です。ここで出会った方は素敵な人ばかりで、笑顔が溢れていました。 八丈島では人口的な問題もあり家族単位での栽培を行っていないので、規模やその方法をここのカフマナファームと比べるとまだ何も始まっていないに等しいのだと思いました。
そしてファーマーズマーケットへ。
私たちが行ったプロジェクトに協力していただいた、KCC(カピオラ・コミュニティ・カレッジの呼称)。その駐車場で毎週土曜日と火曜日に行われる露店市です。
いつもは店舗数が多い土曜日がメインで開催されている市ですが、訪れる観光客が増えてしまったため火曜日も行うようになったといいます。
私たちが行ったときには、小雨が降っていたためか10店舗ほどしか出店していませんでした。
ここで、扱っているのはメイドインハワイの物ばかり。地元の方が普段の生活で買っている食べ物をゆっくり見て、食べることができました。
蜂蜜、野菜、花、ピザなど日本と同じような物がありましたが、タイ料理やシーアスパラガス、甘いもち米の中にマンゴーを入れた食べ物など面白い物も沢山ありました。
ハワイでは玄米が普及していて、露店でも白米か玄米かを選べて驚きました。
2日目午後 ウイラニリゾート
観光地としてのハワイを見ようということになり、午後はウイラニリゾートを訪れました。ここは最近ハワイに作られた、ディズニー系列のリゾートホテルとビーチがある場所です。
白い砂浜に青い海、カラフルなパラソル、きれいなプールとまさに観光地ハワイを象徴するリゾート地です。ところどころにハワイの要素がちりばめられ、日本でも有名なアニメ『リロアンドスティッチ』があちこちにいました。
海岸やプールもディズニーが作ったというので驚きました。
私達はなかなかこういうところに行く機会が私にはなかったのでとても新鮮でした。
日本人の方で結婚式を挙げる人などもいてとても華やかな雰囲気でした。
3日目午前 パエパエ オ ヘエイア
オアフ島、最大規模の養魚地で、88エイカーあるパエパエというNPOが修復を行っています。
作業前とあとに手をつないでお祈りを行い、マングローブの伐採と、養魚地の見学をしました。とても景観が美しい現場でした。
最初は、朝から水に入って泥だらけになるのか…と思っていましたが作業が想像以上に楽しく、作業時間を延長してまでマングローブを切ってしまいました。
このNPOは五年以上活動を行っているのですが、最近になって、州の許可がおりて再建が行えるようになりました。スタッフさんも笑顔が多く、楽しかったです。
3日目午後 ハワイネイチャーセンター
ここではハワイの自然に古来種を増やしたり、古来種を外来種から守る活動を行っていて、子供達にハワイの自然環境を教えたりもしています。
・ハワイのネイティブ(もともとハワイにあった植物種)
・イントロデュース(比較的昔にハワイに持ち込まれた植物種)
・外来種(比較的最近にハワイに持ち込まれた植物種)
これらについて学び、ネイティブの保護の活動、草むしりを行いました。
また、ソーラーパネルやコンポスト、アクアポニックスなどの紹介も受けました。
私はここで自分たちが食べて使うものは自分たちで作るという言葉に心打たれました。
ハワイと八丈島では共通する植物がたくさんあります。でも八丈では古来種と外来種が共存することが望ましいと思います。
外来種という概念について、ただ廃棄、撤去するのではなく、それも利用できる方法を考えようとするカイ先生の考え方はとても素敵だなあと思いました。
環境について考え、実行に移すように宿題をもらいました。
4日目午前 ネイキッドカウデイリー
このデイリーはナチュラル・オーガニックを大切にしながら7エイカーという広大な敷地内に牛、鶏、豚、馬を育てています。ここではチーズやバターも製造販売していて、その味は大変絶品でした。
ここは八丈島と同様にまだまだ発展途上の酪農です。お互いに学ぶことが沢山あると思います。
ここで一緒に同行した酪農家の浅野沙希さん(写真3枚目)から手紙を紹介したいと思います。
岩手県在住の浅野さんは女性酪農家として以前八丈島のゆーゆー牧場で働いていらっしゃいました。
ハワイの酪農に触れる機会を得たいとプログラムに参加されました。
そちら(八丈島)は寒いですか?
こちら(岩手県)も今日は最寒日だそうです。先日の報告会、ご苦労様でした。そしてありがとうございます。
のんちゃんとよしえちゃん。2人で、4人分の想いを伝えるということはきっと簡単なことではなかったですよね。本当にありがとう。
さて、そんな私も今回、自分なりにできることを考え、プロジェクトで訪問させて頂いた牧場「Naked Cow Dairy Farm & Creamery」の方々にお礼のお手紙を書きました。
Nakedさんは姉妹で牧場を立ち上げ、今では従業員と共に3~5人で運営している牧場です。これまで、女性が主力となって牧場を経営している姿をあまり見ることがなかったので、衝撃を受けました。
私はよく夢は牛飼いです、と言うと「女の子が珍しいね」と言われます。私自身、女の私だけでは厳しいのかもと考えている部分がありました。でも、Nakedさんの姿を見て、私は、勇気をもらいました。
「女性酪農家ってやっぱりかっこいい。素敵だな」と再確認しました。「私」だからこそなれる牛飼いになればいいんだと思えるようになりました。手紙には、そういったことも含め、英語の勉強をしていること、これからの進路などについて書きました。
少しずつではありますが、私も進んでいます。まずは働いて、基本を学んで、「守・破・離」していこうと思います。
それと、Nakedさんをはじめとするハワイでの出会いやつながりを周りの方々やひいては日本に還元できるように、小さいことでも発信することが大事なのですね。(笑)
私は少し前まで、
八丈に住んでいないこと。
八丈出身でないこと。
を気にして、
だからできることは何もない…
と考えがちでした。
でも、それは違う。アウトサイダーで離れている私だからこそできることを自分なりに考えて、やっていこうと思います。私は、八丈に行った時、「おかえり」と言ってくれた八丈の人たちが大好きです。
手紙はさっそく今日、出しに行ってきます♪^^
(Facebookから抜粋)
ハワイで得た経験によって浅野さんの心の中にハワイの精神が息づいていると感じました。
4日目午後 インタビュー
3チームに分かれて、KCCの学生の3人から5人にインタビューを行いました。
質問内容は、各チームで考え、学校内の決められたエリアの中で、
暇そうな人を見つけて質問しました。
なかなかスパルタで、英語のできない私にとっては心臓が飛び出そうになるイベントでしたが、同じグループになった法政大学のお二人に助けていただきました。
ハワイ大学の敷地内にあるタロイモ畑で実習を行いました。
川の流れを人体にたとえて説明されたり、伝統に考える宿題をいただきました。
川を実際に見た後、タロイモ畑をかき混ぜる作業をしました。
タロイモ畑は、水田と似ているのかな、と思っていたらそれよりもとろとろしていて、発酵も進んでいました。
畑作りは裸足で行い、枯葉や枯れ枝を畑の中にすきこみました。転ばないようにするのが大変でした。
5日目午後 八丈島ミニ物産展
八丈島でいただいたお土産をおき、観光案内のビデオを流してカフェテリアの前で八丈島物産展を行いました。
あしたば飴を配って宣伝をし立ち止まってくれる人などが多く食事をしている暇がありませんでした。交代で食事を取りにいっていたため、呼び込みや売り込みを英語でしかも一人でやらなければならず大変でした。
しかし、英語が通じたとき、言いたいことをわかってもらったときなどはとてもうれしく、達成感がありました。
5日目午後 八丈島プレゼンテーションKCC
カピオラニ大学で各自八丈に関するテーマ(島の人々、信仰文化、酪農など)で10~15分ほどのプレゼンテーションをすべて英語で行いました。学生の方々はみなさん八丈島に興味津々でした。夜は日本国総領事館の重枝総領事とマウイ島専門議員のカニエラ下院議員と修了式が行われました。そしてカピオラニ大学の学長直筆サインの修了書を頂きました。(これはとても珍しい事だそうです。)
プレゼンテーションを終え、現地の生徒達とすっかりうちとけ、満面の笑み。
ハワイ研修を終えた4人の感想です。
私は今回の「ハワイー八丈島リーダーシッププログラム」で観光では知れないハワイの深い部分が沢山知れた気がします。行く前はハワイは「観光」のイメージしかありませんでした。でも、思った以上に生活感があり、大変驚きました。
当たり前かもしれませんが、一番印象的だったのは出会った先生方はみんなハワイを本当に愛していることです。そしてその愛する文化を守りたい!という思いを強く感じました。私ももっとハワイと八丈の両方を知りたいと思うことが出来ました。
また、私は知らない人に積極的に話しかけたり人前で話すことがとても苦手です。物産展で八丈のことを紹介したりプレゼンテーションしたりと苦手なことばかりでした。
なのでそういう面でもこのプロジェクトで自分自身、すごく成長できる経験となりました。
(八丈高校 家政科1年 豊田ののか)
私が今回の短期留学で得たものは、数え切れないほどたくさんあります。まず、ハワイという外国で一週間だけですが、生活して、そこに住んでいる人と交流できたこと。英語を使って本当の会話をしたこと。自分の海外での無力さを痛感したこと。自分の目標に向かって真剣に努力しているハワイの人たちの話を聞けたこと。ハワイでの、文化や、伝統といったもの住民の捉え方を学んだこと。そして、様々な考えを持った八丈島、法政大学の人たち、たろさんや岡田さんと共に過ごし、 意見を交わし合いながら、自分の意思、目標をはっきりさせることができたことなど、本当にあげればキリがないほどです。それくらい、充実した一週間でした。ハワイ短期留学は、これからの人生のひとつの指標になり、糧となっていくと思います。
支援してくださった皆さん。留学をコーディネートしてくださった、たろさん(栗田さん)。ハワイの方々の話を、一週間つきっきりで通訳してくださった、岡田さん。ハワイの伝統食をご馳走してくれたり、面白いお話をしてくださった、しほさん。授業してくださった皆さん。そしてハワイの皆さん。
本当にありがとうございました。
(八丈高校 園芸科3年 菊池佳恵)
ハワイでの日々は、1日1日を今でもはっきりと思い出せる程、濃密な毎日でした。
カロの始まりの話・クレアナ(責任)についてなどハワイアンの魂の源がぎゅっと詰まったワークショップから始まり、本格的なカヌー体験、カフマナファームでの葉や実の試食、循環するアクアポニックス、バイオダイナミックの精神に基づいて育つ動植物の姿、コオリナリゾートでの人工的に作られた世界、人気のファーマーズマーケット、今までもこれからも膨大な年月をかけて守り抜いて行くフィッシュポンド、在来種と外来種のバランスを考え調和を目指すハワイネイチャーセンター、伝統あるカロ畑、学生の親切さに助けられた学内インタビュー、頭をフル回転させた八丈ミニ物産展、そして最後に、緊張しながらも、自分の出せる力を出し切る事ができたプレゼン発表、学生たちとの交流で出来た友達…。
そして今回、念願叶い、ハワイにひとつしかない乳牛牧場Naked Cow Dairyでは、搾乳をさせていただき、農場を回りながらサステイナブルな飼養環境について学び、それらの運営を支える住民の存在、今後の課題などを、自慢のチーズ、バターを頂きながら聞くことができました。見たもの、得たもの、1人ひとりとの出会い、全てが、大切な瞬間でした。プロジェクトが生まれる瞬間をこの目で見、これから先も関わっていけることは幸せなことで、私のクレアナのひとつだと実感しています。
また、今回のプロジェクトで吸収した事は、自分の将来の夢にも何かしらの形でつながっていくと思います。そんな素晴らしい体験が出来たのも支えてくださる皆様のおかげです。いつもいつもありがとうございます。このプロジェクトを応援してくださる全ての方々に感謝を込め、これからも、夢に向かって頑張り続けます。
(牛飼いの卵 浅野沙希)
このプロジェクトを通して、文化というものを深く考えるきっかけになりました。
私は社会人になって数ヶ月しか経っておらず、自分のライフスタイルを模索している最中です。そんな時にこのプロジェクトでハワイの文化や歴史を学んでみて、自分の今の生活や、今まで過ごしてきた都内や八丈島、ニューヨークなど様々な環境と照らし合わせ、生き方を見つめ直す良いきっかけになりました。
八丈島はとても良い島ですが、島に住んでいるだけでは中々その良さに気付けない部分があると思います。
このプロジェクトは、そんな八丈高校の生徒達が、何か新たな可能性を見出すきっかけとなるプロジェクトだと思います。これからも関わり続けて、自分自身の成長と共に、島の発展につなげていきたいです。
ありがとうございました。
(社会人 日比野 有海)
そして今年もハワイへ渡る次世代リーダーの種を持った生徒3名が決定しました。
左から新島高校2年生 小久保彰紀君、そして八丈高校2年 平井わかさん、豊田ののかさん、長岡太郎君。
今回豊田さんは昨年の経験を活かし、3人を支援するプロモーター役として参加しています。
今年7月に小久保君親子が八丈島へ来島し、2015年度の説明会が開催されました。
八丈島も新島も高校までしかありません。もちろん高校も無い島もあります。
私たちは15歳か18歳になると島を出て行くのが当たり前。
島の役に立つ人になる。これは島に住んでいても住んでいなくても出来る事。
その為には島の事をもっと知りたい。
自給率が1割ほどで、かつて言葉も文化も奪われてから取り戻したハワイアン達に色んな事を聞いてみたい。
お互い島に暮らす者同士。
そして日本も「島」。失われてしまったもの、まだ残るもの、後世に伝えたいもの、取り戻すもの。しっかりと知っておきたい。
ハワイの現状と課題を学ぶことから、八丈の現状と課題を考え、ハワイの文化や価値観を知る事から、八丈の文化や価値観を再認識する。
ハワイの持続可能な社会/街の構築努力を学ぶことから、八丈での努力を考え、自分に何が出来るかを考える。
広い視野を身につけて自分たちの住む「島」から発信する。
熱き志を持つ次世代の若き島のリーダー達は今月11月20日にハワイに向けて出発いたしました。
このプログラムの詳細はHawai'i - Hachijo Leadership program Facebook上でぜひご覧ください。
ハワイの文化は同じ島で生きる彼らに何をもたらしてくれるのでしょう。
報告を楽しみにしています。